ブランド蟹テーブル


地方名県名ブランド蟹名
北陸地方福井県越前ガニ
石川県加能ガニ
山陰地方鳥取県松葉ガニ
島根県松葉ガニ
京都府間人ガニ
舞鶴かに
兵庫県松葉ガニ
津居山ガニ
柴山ガニ
香住ガニ

 石川や福井などの北陸地方や、鳥取や兵庫などの山陰地方では、地域の愛称で呼ばれているブランド蟹があります。ブランド蟹の呼び方は産地ごとに異なりますが、全てオスのズワイガニです。

 メスのズワイガニや外国産のものと区別するため、産地や漁港名が刻まれたタグを脚に付けて、徹底管理されているブランド蟹。各ブランドのズワイガニはどんな味か、美味しいのかどうか、相場はいくらなのかと合わせて、産地ごとの水揚げ時期や特徴といったマメ知識も調べてみました。

【福井の越前ガニ】大きな爪や長い脚に繊細な甘みの身がぎっしり

カニに黄色のタグ

 11月~3月までの寒い時期に水揚げされる越前ガニは、越前や三国、敦賀、小浜港で水揚げされています。漁場である越前沖は水温が低いこと、生息しやすい地形であることや、エサとなるプランクトンなどが豊富にある環境が、美味しいカニを育てています。

 全長は40~60cm。長く太い脚とがっちりした大きな爪を持ち、とても立派な姿で皇室に献上されている由緒正しいカニです。真っ白な身を頬張ると、みずみずしい甘さが口の中に広がります。甲羅には、濃厚なうま味が凝縮されたカニ味噌がぎっしり入っています。

 越前ガニと呼ばれるのはオスだけで、外国産の安いズワイガニと区別するために、黄色いタグがはさみの根元に付けられています。相場は1杯1kg=2万円ほどですが、かにの漁獲状況や時期によって変動します。

ミナコ ブランド蟹ではありませんが、メスはセイコガニと呼ばれていいて、大きさは20cm程度です。お腹に抱いている内子(うちこ)と呼ばれる卵巣は、珍味として重宝されいます。価格は100g=1,000円とリーズナブルなので、気軽に食べられるカニです。

【石川の加能ガニ】ぷりぷりした歯ごたえで甘くしっとりした味

 石川県の加賀と能登の地名を1文字ずつ取ってつけられた加能ガニ。甲羅の幅が9cm以上のオスのズワイガニのことで、11月~3月の荒れた冬の日本海で水揚げされています。輪島や蛸島(たこじま)、橋立港などで獲れる紅色の加能ガニは、石川の文字が入った水色のタグがつけられています。

 加能ガニの最も美味しい時期は、11月~2月だと言われています。柔らかい殻を割ると、身がたっぷり。シンプルに塩ゆでした身はぷりぷりとした歯ごたえで甘くしっとり、贅沢な味わいです。甲羅のカニ味噌は濃厚で、独特の風味があります。相場は1杯500g=7,000円程度。

ミナコ

 メスは香箱(こうばこ)ガニと呼ばれ、オスの半分ほどのサイズの甲羅に、内子と呼ばれるオレンジ色の卵が入っています。香箱ガニはブランド蟹ではなく、知名度こそ低いものの、甘く濃厚な味わいの内子は、オスの加能ガニと比べても引けを取りません。

【鳥取の松葉ガニ】歯ごたえ抜群、あっさり上品な味わい

 松葉ガニは、11月上旬~3月頃に鳥取港、網代港、境港などの日本海で水揚げされています。甲羅幅が11cm以上などの基準を満たしたカニだけに、松葉ガニを証明する白地に赤字のタグがつけられています。

 一口食べると、程よい弾力性のある食感で、あっさりとした上品な味わいです。ゆでても美味しいですが、新鮮な刺身を食べると、とろっとした濃厚な甘みが口に広がります。相場は1杯1kg=1万5,000円となっていますが、漁の時期によって変動があります。

ミナコ

 ちなみに鳥取県のカニの総水揚げ量は、北海道に次いで2位を誇ります。松葉ガニの水揚げ量に関しては全国で1位。県では松葉ガニをPRするため、毎年11月にイベントを開催しています。解禁されたばかりのカニ汁を無料でふるまったり、カニを釣るコーナーがあったり、松葉ガニの販売を通して魅力を伝えています。

【島根の松葉ガニ】漁場が近いから新鮮なうま味が凝縮されている

 松葉ガニの名前の由来は諸説あります。脚の形が松の葉に見えるから、漁師がカニをゆでる時に松の葉を使ったから、刺身を水にひたすと松葉のように見えるからと、様々あります。

 漁が解禁されるのは11月からで、寒さが厳しく海が荒れる冬場の隠岐諸島近海で水揚げされています。漁場が近いため、冷凍ではなく生きた状態で持ち帰ることができるのが美味しさの秘訣。さらに、底引き網ではなくカゴ漁をしているため、傷が少なく活きのいいカニを獲ることができるのです。

 松葉ガニに付けられた青色のタグには、オレンジ色のカニのイラストと白地の文字が入っています。鮮度や見た目も抜群で重量もずっしりと重く、値段は1杯900g=2万円前後。しゃぶしゃぶやお刺身には、うま味がギュッと凝縮されており、一度食べたらやみつきになる味です。

【兵庫但馬の松葉ガニ】ぎっしり詰まった身はゆでても焼いてもOK

 兵庫県の但馬地方で水揚げされる松葉ガニ。タグにはそれぞれの漁港名が刻まれています。また、香住港で獲れたものには黄緑色、柴山港はピンク色、津居山港は水色と、漁港によってタグの色が異なります。

 漁の時期は11月上旬~3月中旬頃で、漁協ではカニの直販も行っています。価格の相場は1杯1kg=1万円程度です。松葉ガニにはぎっしりと身が詰まっており、ゆでて食べると口の中に甘さの感覚がしばらく残ります。カニ味噌は濃厚な味わいと磯の風味が広がり、酒のつまみとしても合います。

ミナコ

 また、ブランド蟹ではありませんが、松葉ガニのメスを但馬ではセコガニと呼んでいます。水揚げ時期が長いことから値段が安くなり、買い求めやすく家庭料理の一品として重宝されています。お腹の卵は炊き込みご飯にしたり、グラタンやお寿司にしたりするなど様々なメニューがあります。

【京都の間人(たいざ)ガニ】は、小型船でしか獲れない幻のカニ

 京都府京丹後市にある、間人(たいざ)漁港で11月から漁が解禁される、間人ガニ。水深300mほどの澄んだ海底を住処としていて、脚が長いため見た目が美しいカニです。

 漁船が小型であることから、海が荒れるなど天候不順の時は漁ができません。さらに漁船の数は5隻で漁をするため、水揚げ量自体少ないことから希少価値の高い「幻のカニ」とも呼ばれています。テレビや雑誌といったマスコミにも取り上げられることから、間人ガニに対する人々の関心の高さもうかがえます。

 港から漁場まで近く、日帰り漁のため、獲ったカニを新鮮な状態で港に運ぶことができます。ひとたび食べ始めると繊維1つ1つが甘く身のしまり方が抜群です。黙々と手を動かして食べたくなり、他のカニを寄せ付けないほどの美食家をうならせる美味しさを秘めています。

 緑色のタグが目印の間人ガニは、長い脚をしており、持つとずっしり重量があります。値段の相場は1杯1kg=4万円と、ブランド蟹の中で最も値段が高いため、最高級ブランドといっていいでしょう。

【京都の舞鶴かに】見た目がゴージャスな冬の味覚の王様

 11月上旬に漁が解禁される、舞鶴かに。舞鶴港は、府内で最も漁獲量の多い港です。漁場は、京都にある丹後半島先端の沖合いで、漁ができるのは海が穏やかな日だけ。漁師さんたちが300mほどの深海に底引き網を垂らして漁を行っています。

 水揚げされたばかりの舞鶴かには半透明の茶褐色で、大きな甲羅が特徴の堂々とした姿をしており、緑色のタグがつけられています。

 ゆでると見事な紅色となり、はさみはもちろん脚の付け根までしっかり身が詰まっています。食べた時のぷりぷりした食感と贅沢な味わい、見た目の大きさや高級感から、冬の味覚の王様とも呼ばれています。

 値段の相場は1杯1kg=5,000円~2万5,000円と、時期によって変動があります。大変高価なため、地元の料理店やホテルや旅館といった宿泊施設へも運ばれています。

【兵庫の津居山(ついやま)ガニ】は、甘味が強くカニしゃぶが絶品

 津居山(ついやま)ガニは青色のタグで、津居山漁港と水揚げした船の名前がつけられています。漁場まで数時間と近いことや、水温を低く保てる水槽を完備しているため、鮮度を維持した状態で漁港に運ばれます。

 脚はすらりと長く、硬い殻が特徴で、ずっしりと重いカニが特に美味しいとされています。甘味が強いため、刺身や焼きガニでももちろん美味しいですが、ただお湯にくぐらせただけのカニしゃぶが絶品です。

 11月~12月の波が穏やかな時期は水揚げ量が多くなります。そのため、この時期に漁獲が盛んになる津居山(ついやま)ガニは、水揚げ量が多く値段が安くなります。相場は1杯600g=8,000円程度。 

 毎年11月に、津居山ガニの即売会やカニ寿司、カニ雑炊の販売、セコガニの釣り大会やカニ汁の販売など、カニにちなんだお祭りイベントも開催され、訪れる多くのカニ好きを魅了しています。

【兵庫の柴山ガニ】110ランクものクラスに厳しく選別

 柴山ガニのタグはピンク色をしており、水揚げされた港の名前、柴山港と船名が刻まれています。カニを獲ったら終わりではなく、漁港まで活きのいい状態でカニを運ぶため、水温が2℃に保たれた水槽で、生きたまま漁港に運ばれます。

 獲れたカニは色や殻の硬さ、小さな傷や汚れはないかなど様々な項目でチェックし、110ものクラスに選別されます。さらに柴山ガニの中でも0.1%の割合で存在する1.4kg以上の柴山ガニは、手のひらに収まらないビッグサイズで、最高級ランクのカニとして黒地にゴールドのタグがつけられています。

 味が濃く、透明感のある身は強い甘みや香りを持つため、ゆでたり焼いたりするなど、どのように調理しても味わい深い豊かな味になります。値段は1杯1kg=1万8,000円前後です。

【兵庫の香住(かすみ)ガニ】は漁獲量が多く、リーズナブル

 兵庫の香住漁港で水揚げされる紅ズワイガニは、香住(かすみ)ガニと呼ばれ、白色のタグがつけられています。生息域は水深500m~1,500mと深く、底びき網では届かないことから、カゴを沈めて獲る漁法が採られています。

 香住ガニは、ミネラルを多く含んだ海洋深層水で育つため、その味はとても甘く、みずみずしくてジューシー、焼きガニや刺身で食べると絶品です。舌の上でちょうど良くほぐれる食感を好んで、やみつきになる人もいます。

 漁期は9月~翌年5月。兵庫県の紅ズワイガニの漁獲量は島根、鳥取に次いで全国で3位と漁獲量が多いことから、価格がリーズナブルです。相場は1杯800g=8,000円程度です。

まとめ

 ・ ブランドガニで最も価格が高いのは京都の間人ガニで1kg=4万円
 ・ ブランド蟹全体の値段の平均は1kg=1万6,000円
 ・ ズワイガニだけで見ると、漁獲量が最も高いのは鳥取県の松葉ガニ
 ・ 兵庫、鳥取、京都、島根の山陰地方では漁港ごとにタグの色が違う
 ・ メスはブランド蟹ではないが、ひけをとらない味でリーズナブル

 ブランド蟹は、厳しい基準をクリアしたオスのズワイガニのみに認定され、タグ付けされています。逆にタグの無いカニは、アラスカやロシアといった外国産や、メスのズワイガニ、サイズの小さな規格外のカニです。

 ブランド蟹は値段は高めですが、良質で美味しい本物の味にふれることができ、タグ無しのカニと一線を画しています。したがってなぜ高級なのか、ブランドと名が付くのかも分かります。地域によって味や値段が異なるブランド蟹選びの参考にしてみて下さい。